議事録は「書く」から「測る」時代へ。AIが会議を採点する "Meeting Intelligence" とは?
「議事録をとる」という行為は、長らくビジネスの基本動作とされてきました。しかし、作成された議事録が「言った・言わない」の確認以外で活用されていない、あるいはトップパフォーマーの商談スキルがブラックボックス化している、という課題を感じているリーダーは多いのではないでしょうか。
今、世界のビジネストレンドは、単なるテキスト化(記録)から、「Meeting Intelligence(会議インテリジェンス)」 と呼ばれる「分析・コーチング」のフェーズへとパラダイムシフトを起こしています。
本記事では、欧米で主流化しつつあるこの新しい概念について、その本質と日本企業における実践的な導入方法を解説します。これは単なるツールの話ではなく、「会議」という経営資源をどう定義し直すかという、組織文化への問いかけでもあります。
Meeting Intelligence(会議インテリジェンス)とは、AI技術を用いて会議の音声や映像を解析し、会話の内容だけでなく「質」や「傾向」をデータとして可視化する技術、およびその概念を指します。
これまでの議事録ツールが「何が話されたか(What)」を記録することに主眼を置いていたのに対し、Meeting Intelligenceは「どのように話されたか(How)」や「どのような反応があったか(Impact)」を分析します。
具体的には、以下のような指標が用いられます。
欧米では、Read.aiやGong.ioといったツールが先行しており、これらは単なる記録係ではなく、「AI Meeting Coach(AI会議コーチ)」 として、参加者にフィードバックを行う役割を担っています。

「議事録ツール」「文字起こしツール」と「Meeting Intelligence」は、その目的と出力結果において明確な違いがあります。
| 項目 | 文字起こし / 議事録ツール | Meeting Intelligence |
|---|---|---|
| 主な目的 | 記録、備忘録、証跡管理 | 分析、改善、コーチング |
| 出力物 | テキストデータ、要約 | スコア、グラフ、行動指針 |
| フィードバック | なし(事後確認のみ) | あり(改善点の提示) |
| 活用シーン | 定例会議、報告会 | 商談、1on1、採用面接 |
| 価値の源泉 | 正確性(一字一句合っているか) | 示唆(次はどうすべきか) |
従来のツールは「過去」を正確に残すためのものですが、Meeting Intelligenceは「未来」の行動を変えるためのものです。例えば、「あの商談はうまくいった」という感覚的な評価を、「顧客の発話比率が57%を超えており、価格の話でポジティブな反応があった」という客観的な事実に置き換えることができます。
組織がMeeting Intelligenceを導入することで、以下の3つの本質的なメリットが得られます。
トップセールスや優秀なマネージャーが、無意識に行っている「間の取り方」や「質問のタイミング」をデータとして可視化できます。 例えば、米国のセールス分析ユニコーン企業であるGong.ioの調査(2024年時点)によると、成約率が高いB2B商談における黄金比は「営業担当者 43%:顧客 57%」であるとされています。こうした指標を自社のベンチマークとして設定することで、新人の育成スピードを劇的に早めることが可能です。
上司がすべての商談に同席し、フィードバックを行うことは物理的に不可能です。AIが「説明が長すぎました」「フィラー(えー、あのー)が多いです」と客観的に指摘してくれることで、メンバーは自ら気づきを得て改善するサイクル(セルフコーチング)を回せるようになります。
「言った・言わない」のトラブル防止はもちろん、ハラスメントリスクの検知にも役立ちます。感情分析によって、特定のメンバーが会議中に萎縮していないか、あるいは攻撃的な言葉が使われていないかをモニタリングすることは、組織の心理的安全性を守る「盾」となります。
新しい技術には懸念がつきものです。特にMeeting Intelligenceに関しては、以下の誤解を解いておく必要があります。
これは最も大きな誤解であり、導入時の最大の障壁です。 実態: この技術は「監視(Surveillance)」ではなく「支援(Enablement)」のために存在します。人事評価の減点材料にするのではなく、「自分の話し方の癖を知るためのフィットネストラッカー」のような位置づけで導入することが重要です。欧米の研究でも、成長目的であることを明示した場合の方が、受容性が高まることが示されています。
実態: AIによる感情分析やスコアリングは、あくまで「傾向値」です。文脈や皮肉、その場の空気を100%正確に読み取れるわけではありません。 AIのスコアは絶対的な正解ではなく、「振り返りのためのきっかけ」として捉えるべきです。「AIはネガティブと判定したけれど、実際は真剣に考えて沈黙していただけだよね」といった人間による解釈の余地を残すことが、運用を成功させる鍵となります。
では、日本企業が実際にMeeting Intelligenceを導入し、成果を出すためにはどのようなステップを踏むべきでしょうか。
まずは、現在の会議がどのような状態にあるかを測定します。 Jicooなどのツールを用いれば、Web会議(Zoom/Google Meet/Teams)にAIを同席させるだけで、自動的に録画・解析が始まります。最初の1ヶ月は「評価」をせず、単に「自分の発話比率はどれくらいか」をメンバー自身が知る期間とします。
海外製ツールは強力ですが、「日本の商習慣」や「自社のバリュー」に合わない場合があります。 例えば、Jicooの「ミーティングAI」機能(2026年2月リリース)では、企業の行動指針や評価項目をプロンプトとして設定し、独自の基準で会議を採点・フィードバックさせることが可能です。 「顧客の課題に共感できていたか」「強引なクロージングをしていないか」など、自社が大切にしている価値観をAIに学習させることで、納得感のあるフィードバックが可能になります。

分析結果をSalesforceなどのCRM(顧客管理システム)に自動連携させます。 「商談の要約」「決定事項」「ネクストアクション」が自動でCRMに入力されることで、現場の入力工数が削減されます。これにより、「分析のために余計な作業が増えた」という不満を解消し、自然とデータが蓄積される仕組みを構築します。
Meeting Intelligenceの効果を最大化するためには、「会議中」だけでなく、「会議前」からのフローを一気通貫で設計することが重要です。
多くの組織では、日程調整ツール、Web会議ツール、議事録ツールがバラバラに導入されています。しかし、これらが分断されていると、「録画ボタンを押し忘れた」「分析ツールへのアップロードが面倒」といった運用ミスが発生しがちです。
理想的なワークフロー:
このように、会議の入り口である「予約」から出口である「分析」までをシームレスに繋ぐことで、意識せずとも質の高いデータが蓄積されていきます。Jicooのような統合プラットフォームを活用することは、この自動化を実現する近道と言えるでしょう。
Meeting Intelligenceは、会議を「消費される時間」から「資産となるデータ」へと変える力を持っています。
「AIに会話を分析される」と聞くと、冷徹な管理社会を想像するかもしれません。しかし、真の目的は逆です。AIに「記録」や「客観的なチェック」を任せることで、人間は「相手の感情に寄り添うこと」や「創造的な対話」により深く集中できるようになるのです。
これは、テクノロジーによる「人間性の回復」とも言えるのではないでしょうか。
まずは、次回の会議から「自分の話す割合」を意識してみることから始めてみてください。そこには、これまで見えていなかったコミュニケーションの改善点が、きっと隠されているはずです。
2026年2月17日
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