2025年、ビジネスにおける会議のあり方は、単なる「記録」から「資産化」へと大きな転換点を迎えています。
これまでの会議DX(デジタルトランスフォーメーション)は、1つの会議をいかに効率よく記録・要約するかという「点」の最適化に留まっていました。しかし、最新のトレンドは、過去の膨大な会議データや、異なる部署間の会議を横断的に分析し、新たなインサイト(洞察)を導き出す「線」や「面」のアプローチへと進化しています。
本記事では、海外で注目を集める「Multi-meeting Intelligence(マルチミーティングインテリジェンス)」という概念を中心に、組織のサイロ化を防ぎ、意思決定を高度化するための最新潮流を解説します。
「Multi-meeting Intelligence(マルチミーティングインテリジェンス)」とは、文字通り「複数の会議を横断して知能化する」技術や概念を指します。
従来の議事録ツールは、あくまで「その日の会議で何が話されたか」を記録するものでした。しかし、ビジネスの現場では、重要な意思決定やプロジェクトの進捗は、たった1回の会議で完結することは稀です。数ヶ月にわたる定例会議や、営業部門と開発部門それぞれの会議など、複数の文脈の中にこそ真実が隠されています。
この技術の本質は、会議データを「点(Single Meeting)」ではなく「線(Multi-meeting)」として捉え直すことにあります。
このように、時系列や部門をまたいで情報を統合できる点が最大の特徴です。これは単なる機能の追加ではなく、組織における「オーラルヒストリー(口述記録)」の扱い方を根本から変えるパラダイムシフトと言えるでしょう。

このトレンドを牽引している代表的なプレイヤーの一つが、欧州発のミーティングレコーダー「tl;dv」です。彼らは早期から「Multi-meeting Intelligence」を標榜し、単なる録画ツールからの脱却を図っています。
tl;dvなどの先進的なツールが提供するのは、組織全体の会議ライブラリに対する「横断的な問いかけ」です。
例えば、プロダクトマネージャーが「先月の全商談の中で、機能Xに対するネガティブなフィードバックはあったか?」とAIに質問したとします。AIは、自分が参加していない営業会議の録画データも含めて解析し、「3件の商談で言及があり、主な理由は操作性の複雑さでした」といった回答を生成します。
これは、従来であれば営業担当者にヒアリングして回らなければ得られなかった情報です。会議データがサイロ化(分断)せず、組織全体の共有知として機能し始める瞬間です。
会議を「線」で捉えることの最大のメリットは、変化のプロセスを可視化できる点にあります。
カスタマーサクセスの現場では、顧客の温度感(Sentiment)の変化が重要です。初回キックオフでは高揚していた顧客が、実装フェーズの会議を重ねるごとにトーンダウンしていく──そのような「予兆」は、単発の議事録だけを見ていては気づきにくいものです。
最新のインテリジェンスツールは、会議ごとの感情分析を時系列でプロットし、リスクが高まっているタイミングをアラートとして提示する機能を備え始めています。
プロジェクトに途中から参加したメンバーにとって、過去の経緯(コンテキスト)を把握するのは多大な労力を要します。「なぜこの仕様になったのか?」という問いに対し、過去の関連会議をAIが即座にリストアップし、議論の変遷を要約してくれる機能は、オンボーディングのコストを劇的に下げる可能性を秘めています。
ユーザー体験(UX)の観点でも、大きな変化が起きています。それは「キーワード検索」から「自然言語による対話(Chat)」への移行です。
技術的には、RAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれる仕組みが活用されています。ユーザーが「Aプロジェクトの課題は?」と質問すると、AIが社内の会議データベースから関連情報を検索(Retrieve)し、それを元に回答を生成(Generate)します。
これにより、ユーザーは「いつの会議だったか」「ファイル名は何か」を覚えている必要がなくなります。あたかも「すべての会議に出席していた優秀な秘書」に話しかけるような感覚で、過去の情報を引き出すことができるのです。
これは単なる効率化を超え、私たちが情報にアクセスする際の「認知負荷」を極限まで下げる試みと言えます。
Multi-meeting Intelligenceを組織に導入するには、ツール選定だけでなく、データの「貯め方」を設計する必要があります。
まず、会議データが分散していない状態を作ることが先決です。Zoomのクラウド、個人のPC、ボイスレコーダーなど、保存先がバラバラではAIは横断分析ができません。
「他部署の会議が見える」ことはメリットですが、人事評価や機密案件など、オープンにすべきでない会議も存在します。
会議の「属性情報(誰と、何の目的で)」をAIに理解させるため、カレンダーやCRM(顧客管理システム)との連携は必須です。

具体的な職種別の活用シナリオを紹介します。
自身が参加できない営業商談やカスタマーサポートの通話をAIに分析させます。
成約率の高いメンバーとそうでないメンバーの商談を横断比較し、成功パターンを抽出します。
開発定例会議のログから、技術選定の経緯を再確認します。
新しい技術にはリスクも伴います。導入初期に陥りやすい罠とその対処法を解説します。
AIは複数の会議をつなぎ合わせる際、文脈を取り違えて誤った結論(ハルシネーション)を出す可能性があります。
常に監視されていると感じ、メンバーの発言が萎縮してしまうケースです。
「とりあえず全部録画」したものの、会議タイトルが「定例」「打ち合わせ」ばかりで、AIが中身を判別できない状態です。
2025年〜2026年初頭にかけての主要ツールの特徴を整理します。
| ツール名 | 特徴・強み | 向いている組織 | 比較基準日 |
|---|---|---|---|
| tl;dv | グローバル対応、CRM連携に強み。「Multi-meeting」の概念をリード。 | 海外拠点がある企業、Salesforce等を活用する営業組織 | 2026年2月 |
| Notta | 日本語認識精度が極めて高い。「Notta Brain」によるドキュメント統合分析。 | 日本国内の大手企業、議事録作成を重視する組織 | 2026年2月 |
| Read.ai | 会議だけでなくメールやSlackも含めた「Cross-channel」分析。 | コミュニケーション全般を可視化したいプロジェクトチーム | 2026年2月 |
※各ツールの機能は急速にアップデートされています。導入時は最新の公式サイトをご確認ください。
会議データの質を高めるためには、会議の「入り口」である日程調整とアジェンダ設定の段階から構造化しておくことが有効です。
日程調整ツールを活用して会議を予約する際、事前に「会議の目的」や「アジェンダ」を入力させるフローを組むことで、AIが後から分析する際の精度が向上します。
例えば、日程調整ツールのJicooなどを活用すれば、予約時に取得したアンケート回答や顧客情報をカレンダーに自動反映できるため、会議ログと顧客データが紐付いた状態で蓄積されます。これにより、AIツール側での「文脈理解」がよりスムーズになります。
また、/magazine/integrationを活用して、日程調整完了と同時に議事録ツールのURLを発行・共有する自動化フローを組むのも、実務的な負担を減らす良い方法です。
会議は「点」から「線」へ。この変化は、単なるツールの進化にとどまらず、組織のインテリジェンスをどう高めるかという経営課題そのものです。
まずは、特定のプロジェクトや定例会議といった小さな範囲から、過去の会議を横断的に振り返る試みを始めてみてはいかがでしょうか。「あの時の議論が、今のこの結果につながっている」という発見が、組織の学習能力を一段階引き上げるはずです。
セールスや採用などのミーティングに関する業務を効率化し生産性を高める日程調整ツール。どの日程調整ツールが良いか選択にお困りの方は、まず無料で使い始めることができサービス連携や、必要に応じたデザインや通知のカスタマイズなどの機能が十分に備わっている日程調整ツールの導入がおすすめです。


